正直に申しますと、僕はほんのつい最近まで、テニスが上手くなるには
「正しいフォーム」
を身につけなければならないと思っていました。
だからテニス雑誌の
「撮れたて、全豪オープン出場選手の最新テクニック!」
なんかを目をハートにしながら読みあさっていました(笑)。
でもおかしなことに、そうやってマニアックな技術理論を学べるだけ学び、詰め込んだ後、僕は強くなれたかというと・・・全くそんなことはなかったんですね。
むしろ弱くなったと思います(笑)。
なぜか?
その理由は簡単で、完全に「頭」でテニスをしていたからです。
「テークバックはラケットを背中側に出ないようにセット、
軸足の蹴りからスイングをスタートして、
股関節の鼠径部の折込みを作り、
左の肩甲骨を後ろに引きつつ、右手を肘から前に出して・・・」
そんな技術論を頭に思い浮かべながらスイングしたとして、練習ではできたとしても、試合ではまず100パーセントできません。
つまり、打ち方をいかに理屈で理解できていたとしても、それでは強くなれないし、「勝てない」ことがわかったのです。
今思えば当たり前の事なのですが・・・当時の僕は、
「何か自分がまだ知らない、コツやテクニックがあるはずだ!それを知れば、必ずうまくなれる!」
と、本気で信じていました。
その後、僕は自分に何が足りなかったのかやっと気づきました。
それは「感覚」です。
いくら正しいフォームを身につけようとも、「ボールを相手コートに入れる感覚」を身につけなければ、ボールは一生入るようにはなりません。
僕たちは、ついつい正しいフォームを身につける=ボールをコントロールできるようになる、と考えてしまいがちですが、実はこの二つは全く別次元の話なのです。
たとえば、ショートラリーが苦手な人っていませんか?
ベースラインからは素晴らしいストロークを打てるのに、サービスラインまでのミニラリーになると、とたんにスイングがぎこちなくなり、ボールをネットしたりアウトしたりする人。
このような人は典型的なフォーム重視の人で、「感覚」がない人です。
普通に考えれば近距離で打ち合ったほうがコントロールはよくなるはずなんです。
ボールを投げて的あてするとき、遠くの的より、近くの的を狙ったほうが当たりやすいですよね?
それと同じです。
しかし、実際にショートラリーがうまくできない人は結構たくさんいます。
そういう人たちに限って、距離が短いから「トップスピンを強くかけなきゃ」と考え、下から上にラケットを物凄いスピードで振り上げたりします。
本当はそんな複雑ではなく、ただ「弱め」に打てばいいだけなんですね。
でも、そんな当たり前のことができない・・・。
つまりそのような「感覚」が身についていない人が、実際問題かなりいるということです。
これはつまりその人の頭の中に「お手本のフォーム」があって、その「理想のスイング」に縛られてしまっている可能性が高いです。
僕はこのようにフォームを意識せずに「感覚」でボールをコントロールすることを覚えてから、逆に前よりも身体の動きが自然になり、結果的にフォームがきれいになったと思います。
これから僕がもし、誰かに「打ち方」を見て欲しいと言われたら、打ち方よりもまずはその人の「感覚」をチェックすると思います。
なぜなら、どんなに打ち方を教えたところで、この「正しい感覚」が伴っていなければ、結局ボールを思ったところにコントロールすることはできないからです。
そして、むしろこの正しい感覚さえ覚えれば、フォームのことなど一切考えることなく、あっという間に上達することができるのです。
次回:「フォームありき」の上達法に代わる【次世代の上達法】