前回の二つの記事を読んでいただければ、フォームありきの従来の指導法では、上達に限界があるということはご理解いただけたと思います。
知っておいてもらいたのが、トッププロ達は皆、「どういうふうにラケットを振ろう」とか全く考えていないということです。
おそらく彼らの9割以上のプレーは自身の「感覚」に基づいて自然に行われているのでしょう。
このことが何を意味しているかわかりますか?
実はテニスが上手いと言われる人たちほど、自分がなぜテニスが上手なのか説明できないのです。
なぜなら、彼らにとってそれはただ「普通に」プレーしているだけなのですから。
彼らが考えていることはいつもただ一つ、
「ボールをどこに打てばこのポイントをとることができるか」
それだけです。
そして自分が「あそこにこんなボールを打ちたい」と望めば、自然とその場所に意図したボールを打てるように身体が動くのです。
そのことから考えると、
「フォームを意識しない」で「感覚」のみでプレーできるようにすること
が、私たちの技術習得のゴールなのです。
なぜならテニスの技術は「オープンスキル」、つまりそれを使うシチュエーションが絶えず変化する競技特性を持っているからです。
世間一般では「安定」を求めてフォームを一定に固定したがりますが、実は100%安定したフォームは、100%安定したボールコントロールを実現しません。
つまり、選手は「常に同じフォーム」でボールを打っていては、逆に刻一刻と変化する状況に対応することなどできないのです。
むしろ、本当に上手な選手からしたら、それは非常に不自然なことです。
そんな「不自然」な状態を進んで作り出そうとするのが、従来の「フォームありきの指導法」なのですから、やはりその有効性には限界があると言わざるを得ません。
次回:「2人の自分」の存在を知ろう