全豪OPでここまでの一番の「激戦」と言えば、
やはり男子4回戦の王者ジョコビッチVS伏兵シモンの一戦ではないでしょうか?
確かに単にジョコビッチの調子が悪かったから、
といえばそれまででしょう。
しかし、テニスは常に相手がいるスポーツです。
相手がたいしたことなければ
特に自分のプレーがよくなくてもスムーズに勝てます。
結果「今日は調子がよかった」と”錯覚”してしまうこともあります。
逆に、「何か思うようにいかない」のであれば、それは
相手がこちらを調子づかせないようなプレーをしてきたから、
だとも考えられるわけです。
なので、今回のジョコビッチVSシモン戦も、
ジョコビッチの調子を上向かせなかった理由が
シモンのプレーにはあるはずなのです。
そこら辺を今回は探ってみようと思います。
ジョコビッチは現王者。
正真正銘「地球上で最強のテニス選手」と言っていいでしょう。
去年(2015年)はグランドスラム3大会で優勝し、
唯一優勝できなかった全仏でさえも準優勝。
最終戦であるワールドツアーでも4連覇を達成し、
もはや手がつけられない存在になりました。
ただ、そんな彼のプレーの特徴を聞かれると、
そこまでパッと思いつくものがないという人が多いのではないでしょうか?
・ナダルなら超回転のかかったフォアハンド
・ラオニチならビッグサーブ
・錦織ならエアKと遊び心溢れる配球
彼らは分類的には「オールラウンダー」ですが、
それでもトップ選手なら「○○といったらコレ」のような
各々の代名詞的なショットやプレーがあるのがむしろ普通です。
それらのショットやプレーが、いわば下位ランカーとの
「違い」を生み出しているわけですからね。
史上最高のオールラウンダーと言われるあのフェデラーでさえ、
近年はよりテンポの速いストロークからの
鮮やかなネットプレーの印象が強くなってきました。
ただ、ジョコビッチの場合は彼らほど
自身を形容するショットやプレーがない。
強いてジョコビッチの印象をあげるとしたら
「抜群にフットワークがいい」ということ。
そして、もう1つが
「トータルバランスが非常にいい」ということ。
この2つかと思います。
そう、ジョコビッチの最大の強み、それは
何が飛び抜けているのかわからなくなるほど、
あらゆるストロークの技術、
そしてパワーや持久力などのフィジカルが
高い水準にあるということです。
まさしく全種目オール5の超優秀選手、
それがジョコビッチです。
そんな優秀なジョコビッチが選んだ戦術とは?
そんなテニス選手に必要はありとあらゆる要素が
世界最高レベルにあるジョコビッチが好む戦い方。
それが、
こちらはできる限りリスクを侵さずに
相手をじわじわと追い込む
ことです。
ジョコビッチのプレーには一見派手さがありません。
ツォンガのような豪快なフォアハンドも打ちません。
ネットプレーもよほどのチャンスか、何か理由がない限りはほとんど使いません。
やろうと思えばいくらでもできるのに、です。
その理由は、ジョコビッチはこれらのプレーは
ハマればポイントが取れますが、リスクもある
ということをちゃんと理解しているからです。
そのリスクについてはこちらの記事でも触れています。
⇒ヒューイットが得意とするカウンターショットを徹底解説!!
つまり、テニスにおいて無理な攻撃を仕掛けるということは
それだけ自陣に「時間」だったり、「空間」だったりの
”隙”を作らなければならない。
そのことをジョコビッチは知った上で、
「自分の能力であれば、無理に攻めなくても勝てるのではないか」
そう考えた(もしくは早い段階からそう認識していた)
のだと思います。
結果、ジョコビッチは今のようなプレースタイルになりました。
こちらが「絶対に決められる」というボールが来るまでは
とことんラリーを続ける。
無理にウィナーを狙いにいったり、
アプローチを打ったりはしない。
そんなリスクを冒さなくても、ほとんどの相手は
ジョコビッチほどの質の高いボールを打ち続けられたら
必ず最後はボールが浅くなり、先に攻め込まれることになるのです。
もちろん、時にはジョコビッチも思い切ったプレーをすることはあります。
ただ、僕に言わせればそれらは
相手によりプレッシャーをかけるための「フェイク」です。
彼の戦い方の本当の「核」にあたる部分は、
「こいつ(ジョコビッチ)からポイントが取れる気がしない」
と思わせるほど、高い質のフォアとバックで
何球でも何十球でも返し続けるというものです。
このジョコビッチの基本的なプレースタイルは
ツアーで頭角を表し始めた当初と
そこまで変わっていないように思います。
それが2008年の初のグランドスラム優勝を皮切りに、
2011年ツアーで開幕から破竹の43連勝や、
2015年の全グランドスラム決勝進出などを経て
年々その「質」を増してきて
今のジョコビッチがあるということでしょう。
そんなジョコビッチがなぜシモンに苦戦したのか?
ジョコビッチがこの試合で「調子が悪かった」とされるのは
非常に多くのアンフォーストエラーを犯したからです。
その数は実に100本以上。
では、なぜここまでジョコビッチは多くのミスを犯したのか?
もちろん、調子が悪かったのはもちろんあるでしょう。
ただ、ここで注目すべきは対戦相手である
シモンのプレースタイルです。
シモンはいわばストロークで粘りに粘る
生粋のカウンターパンチャーです。
つまり、自分から攻めるということはまずしません。
それよりもとにかくつないでつないで繋ぎまくる。
これまたジョコビッチ以上に地味な選手です(笑)。
ただ、そこにジョコビッチが今回苦戦した一番の理由がある気がするのです。
つまり、ジョコビッチにこの試合で求められたのは
完全に自分の方から攻撃することだったわけです。
そうしないと本当に延々とラリーが続いてしまいますからね。
そこでファーストセットでジョコビッチは
コートの中に踏み込んでかなり積極的に
コースに打ち分けていきます。
しかし、ジョコビッチはさっき言ったように
本来自分からがっと一気に攻めるタイプの選手ではありません。
むしろ、相手にわざと攻めさせて、
そこでできた隙をカウンターで突いていくのが得意です。
(特に準決勝のフェデラー戦ではそれが顕著でした)
それが、シモンには通用しない、というかできなかった。
だから、1セット目をとったものの、
ジョコビッチはなかなかリズムに乗れず、
ついにはファイナルまでもつれてしまった。
それが僕の見解です。
テニスには相性が必ずある
僕の学生時代の尊敬する先輩は、
よくテニスを「ジャンケン」にたとえていました。
つまり、実績などはほぼ同じ選手でも、
「グー」の選手が「パー」の選手と戦ったら
負けてしまうということです。
これは僕も現役中は嫌というほど感じていました。
逆に言えば、「マズイ戦い方」を途中で変えるだけで、
それだけで0-4から挽回したり、0‐5から一気に挽回したこともありました。
それだけテニスにおいて「戦い方」というのは、
技術以上に大事なものなのです。
それを今回のジョコビッチVSシモンの試合を見て
改めて思いました。
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